後編健康づくりに向けて

収束が見通せない新型コロナウイルス感染症。前編では、これまでの取り組みや後遺症の状況について理解を深めました。後編では、私たちができるコロナ対策や心構え、今後のコロナの見通しについて聞きました。コロナ禍で健康を保つためには、日々の健康管理が不可欠です。(座談会は2月24日に実施しました)

<企画・制作/静岡新聞社地域ビジネス推進局>

 

健康づくりに向けて

ワクチン接種重症化予防 効果大きく

鈴木
新型コロナウイルスの感染症対策のため、どのようなことに気をつければいいのでしょうか。
後藤
感染の成立には3つの要素があります。まず、感染者や飛沫付着物の「感染源」。次に飛沫や接触などの「感染経路」。最後がヒトなどの「感染宿主」です。これらの要素ごとに適切な策を講じることが感染予防効果を高めます。コロナウイルスはもともと風邪のウイルスで、何度もかかる特徴があります。ですので、ワクチン接種で感染よりも重症化を防ぐことが重要です。
感染成立の三要素とその対策

感染成立の三要素とその対策

古賀
新型コロナウイルス感染予防には「3密」を避けることが大事と言われていますが、実は「1密」でも感染し得るのです。双方がマスクをしていても、50センチの距離で15分間会話をすれば、ほぼ感染します。会話では2メートルの距離を確保してください。また、接触感染を防ぐ手洗い、換気、短時間の会話等を常に心掛けてください。
鈴木
基礎疾患があると重症化のリスクが高いと聞きますが、例えば呼吸器に基礎疾患がある場合はいかがでしょうか。
白井
私の外来にはぜんそくの患者さんが結構いますが、その方々がコロナ感染にかかりやすいとか、重症化しやすい傾向があるということはありません。それより肥満、腎臓病、糖尿病の方や喫煙者のほうが重症化しやすい印象です。
また「ぜんそくや食物等のアレルギー疾患があるから、ワクチン接種はしない」という方もいますが、極端に危険視するよりも、ワクチンの予防効果のほうがメリット大です。今からワクチンを打ち始めても決して遅くありません。
患者背景(県立総合病院、第5波まで)

患者背景(県立総合病院、第5波まで)

中島
肥満は重症化のリスクが高まります。肥満の方は腹式呼吸が制限され、肺の換気が悪化します。糖代謝も悪くなって糖尿病につながり、免疫機能も低下します。当センターで受診された方にそれらのリスクも踏まえて説明をすると、患者さんは実感をもって理解してくださっています。
鈴木
コロナ重症化には、生活習慣病が大きく関わっているようです。コロナ禍での健康な生活を維持するため、必要な心構えを教えてください。
古賀
“ウィズコロナ”の時代、皆が100歳まで健康的に生きるため、私は「健康・長寿の10カ条」を提唱します。「よくかみ、腹八分目、歯を磨く」「食事の最初は野菜料理で血糖上昇を抑制」「バランスある食事」「毎日30分の歩行」「早寝早起き、禁煙、適度なお酒」「頭を使い明朗に」「ストレスをためない」「ワクチン接種、マスク、手洗い」「定期健診と自己管理」「かかりつけ医を持つ」です。
自分の身体のメディカルチェックを行うことは重要でそのためには、人間ドックや健診は欠かせません。特に中高年の方ほど、ぜひ年に一度の受診をお勧めします。皆さんが健康で長生きしていただくためにも、私どもはこれからもバックアップに尽力してまいります。
古賀所長の提唱する健康・長寿の10カ条とは!!

古賀所長の提唱する健康・長寿の10カ条とは!!

後藤
県でも広報紙を通じて健康づくりの記事を掲載したり、がん検診についての調査を行ったりしています。新型コロナウイルス感染前の2019年度と比べると、20年度のがん検診の受診者は1割以上減少しました。特に、胃カメラを使う胃がん検診は顕著でした。「健診控え」が続くと、早期がん、心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞といった病気が見過ごされる懸念が出てきます。
そして現在、多くの医療機関の診療体制は逼迫(ひっぱく)しています。病床の不足、医療スタッフの感染や濃厚接触による自宅待機など、ぎりぎりで回している日々なのです。このような状況で、もし皆さんがご病気になった時、医療機関の状況によっては適切な治療ができなくなる恐れもあります。そのためにも、定期健診やかかりつけ医の診察を忘れることなく、ご自身の健康管理を積極的に行ってください。
白井
今年の第6波は、正月明け・冬場・感染者数の急増と、医療機関にとって非常に悪いタイミングが重なり、病床もスタッフも足りない状況でした。最近(2月下旬)はやっと峠を越してきたように思いますが、コロナ感染症拡大以降、医療現場は大変厳しい状況を強いられています。

日々の予防対策徹底 新薬に期待 

鈴木
このコロナ禍、いつまで続くのかと思いますが、これから私たちは日々どのように過ごすべきか教えてください。
白井
第6波は重症になる方は少ないのですが、小児、高齢者の患者さんは非常に増えています。私はこれから承認される新薬に、非常に期待をしています。新薬が出れば、新型コロナウイルスに感染しても、インフルエンザと同じような対応ができるからです。
その日が来るまで、皆さんには手洗い、うがい、マスク着用を怠らず、乗り切っていただきたいと思います。
後藤
新型コロナウイルスが、インフルエンザ並みの普通の呼吸器感染症に変容する日は、そう遠くないのではないかと考えています。あくまでも個人的意見ですが、今急速に3回目の接種が進んでいます。5、6月頃には、12歳以上の多くの方の接種が完了するでしょう。それまでには、ファイザー社や塩野義製薬の内服薬が潤沢に普及するとも予想されます。それらの条件がそろえば、夏ごろには一旦収まるのではという希望を持っています。
今まで変異株は、およそ半年ごとに登場しています。今後新たな変異株が夏ごろに出なければ、今年の秋・冬は、感染拡大の心配も回避できるのではと考えています。語呂合わせですが、来年以降の令和5(コ)、6(ロ)、7(ナ)年の3年間をかけて、新型コロナウイルスが普通の感染症になっていくのではと思います。
新型コロナは、いつ普通の呼吸器感染症になる?

新型コロナは、いつ普通の呼吸器感染症になる?

座談会

(実際の座談会はマスクを着用して実施しました)

今回の講演は動画でご覧いただけます。

  • コロナ予防策と健康管理(動画 約14分)
  • 予防医療、コロナのこれから(動画 約16分)
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