SBS静岡健康管理センター 健康トーク 「教えて!健康」

慢性腎臓病に負けないぞ! 成人の8人に!成人の8人に1人の病気
第1回 腎臓について知ろう!
 日本の成人の8人に1人は慢性腎臓病で、21世紀に出現した新たな国民生活病といわれています。しかし、腎臓病は自覚症状がほとんどなく、分かりにくいのが現状です。慢性腎臓病などを専門とする医師、健診・保健指導のプロフェッショナルに腎臓病について聞く健康トーク(全3回)では、適切な予防法や診察の受け方を紹介します。

 〈企画・制作/静岡新聞社企画事業局〉

自覚症状がなく、健診がかぎ
腎臓は繊細な臓器
遠山
慢性腎臓病の患者数は成人の8人に1人と言われています。この病気は健康長寿の大敵です。この病気の原因、予防法などについて理解を深めたいと思います。最初に腎臓について教えてください。
背骨の腰のあたりより少し上、背骨の両脇、ちょうど肋(ろっ)骨に隠れるあたりにあります。左右1つずつあって、1つが150グラムから200グラムぐらいの、ちょうど大きめのハンバーグぐらいの大きさの臓器です。腎臓は基本的に尿を作ります。尿の原料は血液です。その血液が腎臓の中を一周する間に腎臓は不要のものと必要なものをこし分けて尿にします。最終的にはできた尿が腎盂(じんう)という一番真ん中の袋のような場所に集まります。腎盂から尿管を通って膀胱(ぼうこう)に流れていきます。
腎臓は物言わずに黙々と働く臓器ですが、非常に繊細で、厳しい環境では弱ってしまいます。
遠山
両方の腎臓を、どのくらいの血液が流れますか。
1分間に約1リットルの血液が通ります。心臓からは1分間に4—5リットルぐらいの血液が運ばれます。そのうちの20%ぐらいが腎臓を通ります。尿を作るのが主な仕事ですが、ほかにもいろいろなホルモンを作る仕事もしています。腎臓がだめになると尿ができないだけでなく、ホルモンが関係したほかの臓器が傷んできます。
遠山
慢性腎臓病の定義はいかがですか。
ろ過される血しょう量「糸球体ろ過量(GFR)」という腎臓の働きを表す値が60を切っている状態、もしくはタンパク尿、血尿など尿の異常が3カ月以上続いている場合です。
遠山
慢性腎臓病の原因には、どのようなものがありますか。
一番多いのは動脈硬化性の腎硬化症だと思います。腎臓が動脈硬化によってだんだん萎縮していく病気です。そのような腎臓は実際に触ると硬くなってます。次は糖尿病性腎症だと思います。糖尿病が悪化すると、腎臓もだんだんと悪くなってくる糖尿病の合併症です。高血圧に合併した腎臓病が多いですね。
腎臓の仕事
特徴は自覚症状の少なさ
遠山
慢性腎臓病には、どんな自覚症状がありますか。
向井
初期には全く症状がありません。ゆっくりと進行する場合、末期でも特に症状を感じないときもあります。進行すると尿毒症という症状が出てきて、食欲不振とか吐き気とか倦怠(けんたい)感、浮腫、息切れといった症状が出てきますが、これはかなり進行した状態の時に出てきます。急激に症状が出たときには、すぐにかかりつけの先生に相談する必要があります。
早期発見が重要
遠山
腎臓病は良くなりますか。
向井
早期の場合には、適切な治療を受けると腎機能は改善する可能性がありますが、進行すると回復は難しくなります。
遠山
慢性腎臓病と関連のある病気はどのようなものがありますか。
向井
高血圧は非常に多い疾患で、健診でも一番多く発見する生活習慣病ですが、高血圧は腎臓病の大きな原因の1つです。血圧が高いと腎硬化症という腎臓病になりますが、透析の原因として3番目に多い疾患です。血圧が高いと尿タンパクが出てくる率も高く、腎臓病の進行も速い上、さらに最終的な末期腎不全に至る確率も高くなります。血圧の治療は腎臓病の最も大事な対策の一つです。夜間、早朝の高血圧が腎臓病を悪化させますので、血圧を早朝と就寝前に測ることをお勧めします。
高血圧の人は定期的な尿検査を
高血圧の患者さんは定期的に尿の検査をすべきです。高血圧は腎臓が悪くなる病気だと意識を持ってほしいですね。
尿に血液中のタンパク質「アルブミン」が出ているということは、腎臓の尿を作る場所の一番上流の場所「糸球体」が傷んでいるという証拠です。高血圧で漫然と薬を飲むのではなく、検尿をしていただきたいと思います。
向井
高血圧の人は想像以上に尿にアルブミンが出ていると思います。タンパク尿、アルブミン尿が腎臓病の悪化の原因になります。逆にタンパク尿、アルブミン尿を抑止することで腎臓病の悪化を防げますので、非常に大事な検査です。
腎硬化症は、全身の血管の病気の1つの現れです。ですから、腎硬化症で透析に至る人が少ないのは、恐らくその途中で心臓病、脳卒中など他の血管の病気でお亡くなりになる人が多いからだと思います。
低い特定健診の受診率
遠山
腎臓の機能の低下は、特定健診で見つかるケースが多いのですか。
岡村
静岡市国民健康保険加入者の平成21年度特定健診では2983人(13.2%)に腎臓の機能低下がみられました。
遠山
受診率はどのぐらいですか。
岡村
静岡市の国民健康保険の特定健診受診率は、平成20年が14.4%、平成21年が16.5%、本年度はまだ途中ですが、大体前年度と同じぐらいの受診率になりそうです。一般的にメタボ健診と言われるので、肥満の人が受ける健診というイメージがありますが、肥満でない人にも受けていただき、腎臓の機能などを確認してほしいですね。
健診以外で見つからない腎臓病
遠山
健診のほかに早期発見の手段はありますか。
佐々木
症状が少ないので、ないと思います。尿検査、血液検査などをしっかり受けていただくことが大変重要です。
向井
健診を受けても放置する人がたくさんいます。健診を受けて要受診と言われた方は速やかに、かかりつけの先生に相談することが大切です。
佐々木
慢性腎臓病と生活習慣病(糖尿病、高血圧症、脂質異常症、高尿酸血症)は密接に関係しています。管理が不十分な生活習慣病の危険因子を1つ、2つ以上持っている人は、多くの場合、腎臓病の定義に引っかかることが多いのです。
年に1度は健診を
遠山
健診、検査はどのぐらいの間隔ですべきですか。
佐々木
一番大事なのは尿検査ですが、尿タンパク、尿潜血反応は1回だけでは分からないので、複数回のデータが必要です。
健診は必ず年1回は受けるべきだと思います。
佐々木
病気がある人は通常3カ月から6カ月程度で血液、尿の定期的なチェックが必要です。
座談会参加者

県立総合病院副院長
腎臓内科主任医長

森 典子さん

静岡市保険年金管理課参事

岡村 昌子さん

静岡市清水医師会理事
向井内科循環器科
クリニック院長

向井 英之さん

静岡市静岡医師会理事
佐々木内科循環器科院長

佐々木 玲聡さん

進行・SBS静岡健康管理
センター所長

遠山 和成さん

企画・協賛/SBS静岡健康管理センター