自治体検診の情報、要チェック
がん検診は、勤務先や検診センターで受診する機会がない方は、居住する自治体で実施されている検診を受けられます。例えば、静岡市ではどんな検診が受けられますか。
- 鈴木宏
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行政が行っている検診は各自治体で異なるのですが、静岡市の平成22年度のがん検診は、子宮頸部がん、乳がん、胃がん、大腸がん、前立腺がんの6つがあり、それぞれ対象年齢が決まっています(表1)。肺がんは基本的には自己負担はなく、ほかの検診項目もそれぞれ400円〜2000円と大切な命を守ると考えたら、料金は高いものではありません。静岡市にお住まいの方で、お勤め先で検診を受けるチャンスがない場合は、対象年齢になったらぜひ積極的に受診していただきたいと思います。また、ほかの地域の方も、ぜひこの機会に各自治体に問い合わせてみてください。
- 遠山
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さまざまながん検診が受けられるのですから、行政もさらに普及啓発に取り組まなければなりませんね。ただ、このように対象年齢が検診によってばらばらなので、やはり、対象の市民には受診券を送付したほうが親切だと思います。
- 鈴木宏
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前回も出ましたが、藤枝市ではずっと前から対象市民全員に受診券を送付し、受診率が他市と比べて高いです。他県もそうだと思いますが、静岡市のように大きな自治体では受診対象者を特定することがなかなか難しいのが現実です。ただ、最初から戸別通知といかなくても地域の保健委員などを通して、地域ぐるみで対象者一人ひとりに呼びかけていく普及啓発の取り組みは、今後ますます必要になっていくと認識しています。
「自分は大丈夫」「怖い」など過信や不安からあえてがん検診を拒んでいる人もいるようです。そういった人たちに検診を受けさせる工夫はしていますか。
- 遠山
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そうですね。うちのセンターでは1回目の検診で精密検査が必要と診断された受診者に対しては、3カ月くらい経った時点で「2次検査は受けましたか」と手紙を出しています。そして、返事が来ない人に対しては、それからまた3カ月後にもう1回だけ手紙を出しています。しつこいと思われる人もいるでしょうが、2回通知すると結構、皆さん反応してくれて直接電話をくれる方もいらっしゃいます。
- 鈴木宏
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現在は行政ではなかなかそこまでの追跡調査は難しいのが実情ですが、これからは最初の検診だけでなく、2回目の精密検査を受けたかどうかのフォローも必要だと感じています。最初の検診の受診率向上だけでなく精密検査の受診率も上げていきたいですね。
- 袴田
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普段から私の医院や渥美先生の医院のような開業医にかかっている人には、医師からも検診を勧めやすい環境があります。ただ、問題なのは日ごろから病院にかかっていない方々。医療機関と全く接触のない人に検診を勧めることはかなり行政の力、または町内会単位で呼び掛けあって取り組むことが必要だと思います。
- 鈴木宏
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少しでも多くの市民が目に触れて受診のきっかけにしていただけるような仕掛けが必要だと思っています。静岡市では本年度、300カ所ほどの市内の薬局やスーパーなどに、がん検診の受診を呼びかけるポスターの掲示やチラシを設置するなどしました。また、国民保険加入者の「特定健診」未受診者にたいして、特定健診のお知らせとともに通知したほか、集団検診を土曜日に実施するなどの機会を臨時で増やしたりしました。
- 落合
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静岡県看護協会でも、県民の一人でも多くの方が「がん検診」や「特定健診」を受けるよう、県下地区支部活動を通じ、PR強化に努めていきたいと思います。
「がん予防」は子供の時から
日本のがん対策について、また静岡のがん対策について、早急に取り組まなければいけないことは何だと思いますか。また一般市民に対して望むことは何ですか
- 鈴木宏
まずは1人でも多くの人に検診の大切さを理解していただき、検診を受けてもらいたいですね。また、検診を受けて健康を維持していくことは、自分のためだけではなく、周りの人、地域社会全体の問題だということを伝えていきたいと考えています。
- 渥美
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今まで話があったように自覚症状のない健康な状態で検診を受ければ、がんが見つかっても早期の場合が多いわけです。検診を受けた人と受けない人では、その人にとってその後の人生が変わるということをぜひ、知っていただきたいです。
- 袴田
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がん検診を受けたことのない方は、ぜひ一回試しに受けてみてください。受けてみて異常がなかったら非常に安心感がもてます。もし各市町からクーポンなどの通知がきたら絶対にそれを見逃さないで、検診を受ける良いチャンスととらえてほしいですね。
- 落合
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がんは公衆衛生の一つです。医療従事者も一般の方も予防医学にもっと関心を向けることが大切だと思います。また、がんに対して「自分は大丈夫」と過信しているという人も結構います。がんはほかの病気と違って、自分ではなかなかわからない細胞、遺伝子レベルの病気です。皆さん一人ひとりの遺伝子が違うように、一人ずつ病気も異なるのです。「自分は大丈夫」という安易な考え方は捨てて、禁煙はもちろん、栄養バランスの取れた食事、適度な運動など日ごろの生活習慣から家族ぐるみ、地域ぐるみ、職場ぐるみで真剣に見直す時期に来ています。もっと言えば、誰もががんになりうる時代なのですから、子供の時から「健康教育」として長い間かけてがん予防に取り組むことが必要だと考えています。
- 遠山
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医療費の面からもこれからは、日本ではほとんどみられない予防医学に力を入れるべきでしょうね。
- 渥美
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そうですね。がんの医療費は高額です。金銭面からもがん予防は個人の人生のためだけでなく、地域のため、国のためにも必要なことなのです。
- 袴田
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予防医学といえば、子宮頸がんワクチンが日本でも導入されました。現時点での費用は3回の摂種で5万円ほどかかり、けっして安いとは言えませんが、検診の費用と同様、大切な命を守るための対価として考えたら高くないと思いますよ。
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静岡市保健福祉子ども局
保健衛生部
健康づくり推進課長鈴木 宏明
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静岡市静岡医師会理事
(袴田外科医院 院長)袴田 光治
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静岡市清水医師会理事
(アツミクリニック 院長)渥美 清
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静岡県看護協会副会長
落合 敏子
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SBS静岡健康管理センター
所長遠山 和成
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進行(SBSアナウンサー)
鈴木 通代