第2回糖尿病予防は日頃から
糖尿病は、栄養の偏った食事、運動不足、遺伝的問題など、発症要因はいろいろあり、深刻な合併症も知られています、一方で食生活とウォーキングなどの運動の改善で、予防することも可能です。どんなことに気を付けたらいいのでしょうか。
「教えて!健康」シリーズの第2回は、「糖尿病予防は日頃から」をテーマに紹介します。
適切な運動と食事が症状改善の鍵
原因は現代人の食生活と運動不足
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- 遠山
- 最近の糖尿病の患者さんについて何か気になる点はありますか。
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- 遠藤
- サラリーマンなどの成人では、朝食を食べないとか夕飯の摂取時間が遅い、カロリー過剰などが目立ちます。また、女性の場合は間食の多さや飲酒も増えてきています。男女とも肥満例が多く見られます。
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- 田村
- 特に男性に多いのですが、夜中に働くなどの不規則でストレスの多い生活をしている方は、糖尿病のコントロールが難しいように思います。定年などにより、生活のリズムが変わり、運動する時間を取れるようになって血糖コントロールが著しく改善した人もいます。たとえばヘモグロビン(Hb)A1c10%以上、常に血糖値が200mg/dlを超えるような状態からヘモグロビン(Hb)A1c6%台に改善した例もあります。ストレスがかかった生活が続くことが、糖尿病を悪化させる要因になっているように感じます。また、20年ほど前から小児肥満の増加が話題となっていて、今後20?40歳ぐらいの年代の方の糖尿病が増加してくることを心配しています。
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- 遠山
- 最近、「炭水化物ダイエット」が盛んに言われますね。
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- 遠藤
- 糖尿病治療中の人が行う炭水化物ダイエットは“くせ者”の印象があります。まず、低血糖になる危険があります。また体重が一時的に落ちたり、検査データも改善したりして、一見、いいのですが、長期的にみると、決して寿命が延びたりすることはなく、動脈硬化性疾患はむしろ増えたり、たん白質の摂取が増えて腎臓の負担が増えることもあります。日本糖尿病学会も、極端なダイエットより、三食のバランスのよい食事を勧めています。治療中の人は、主治医とよく相談してほしいです。
異なる日本人と欧米人のリスク
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- 遠山
- 日本人の糖尿病の最たるリスクはやはり肥満なのでしょうか。
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- 遠藤
- 中には、肥満でない人が発症する場合もありますが、肥満は大きく関係しています。親が糖尿病だと子どもも糖尿病になりやすく、日本人の糖尿病は、遺伝因子に加えて、それ以上に悪い生活習慣が糖尿病の原因だといえます。現代人の環境要因として、炭水化物や糖質脂肪の多い食事と、国民的運動不足が糖尿病増加の大きな原因の一つだと思います。また、最近では大都市よりも地方の農村部のほうが、移動手段が車中心で、糖尿病が増えているとも言われています。静岡市内にある私のクリニックでも初診で来られる患者さんのほとんどが運動習慣のない人です。
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- 遠山
- 日本人の肥満についても欧米人とも違うのでしょうか。
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- 田村
- 日本人は欧米に比べると、内臓脂肪型が多くて、インスリンに対しても感受性が高い民族と言われています。人はエネルギーをある程度、蓄えておく必要がありますが、皮下脂肪として蓄え切れなくなった部分が内臓にたまってきたり、あるいは脂肪肝になったり、筋肉にたまったりします。内臓脂肪はいろいろな物質を出して高血圧の原因になったり、糖尿病を発症させてきたりします。脂肪の体内での分布の仕方が人種によって異なり、糖尿病の発症に差が出るのだと思います。
発症リスクの高い肥満
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- 遠山
- 肥満予防には特定健診などの健康診断がとても重要だと思いますが、静岡県の状況はどうでしょうか。
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- 土屋
- 静岡県の平成25年度の特定健診の受診率は45・2%です。国の目標値は70%以上と言われていますので、まだかなり低いのが現状です。家族や近所で誘い合って受けてもらうことが必要だと思います。県内の市町でも無料で健診できる地域や、がん検診と合わせてできる地域は受診率が上がっていますので、各自治体の取り組みも重要だと考えています。
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- 遠山
- 確かに受診率が増えれば病気は減ります。皆連れだって特定健診を受けましょう。さて、糖尿病の予備群とはどのような人なのでしょうか。
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- 田村
- 糖尿病の基準を満たさないけれど、正常値ではない状態を予備群と言っています。実は予備群は少し、減っているというデータも出ています。これは、診断基準の変更も影響していると思いますが、数年前から特定健診が始まり、その効果が出始めているのかもしれません。ただ、予備群が何も対策を講じないと毎年1割程度の方が糖尿病になっていますので、やはり予備群の人においても食事や運動療法が重要です。
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- 土屋
- 糖尿病予防については、健康や医療に詳しい保健師や管理栄養士などを中心に地域ぐるみで積極的に健康づくりに取り組むことも大切だと思っています。食事に関しては、平成25年給食施設実態調査では、ヘルシーメニュー(食塩や脂肪が少ない、野菜が多いなど)を提供している特定給食施設が、全体の70・6%でした。県では、100%を目指していきたいと考えています。また、静岡市内で「お弁当の日」を設けている会社があって、男性社員も自分で作って出勤する人がいるそうです。男女かかわらず、自分で料理を作る習慣付けることはとてもいいことだと思います。
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- 遠山
- 糖尿病の人と予備群は見分けることができますか。
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- 遠藤
- 見た目では判断できませんし、予備群は症状もないので、いきなり検査をしたら、かなり悪化していたというケースもあります。ですが、やはりメタボであるかどうかが大きなポイントではあると思います。内臓脂肪型の肥満があるかどうかや、特定健診の項目にある腹囲やBMI、血糖、HbA1cなどの測定で容易に発見できます。
発症予防は食事・運動療法を中心に
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- 遠山
- 発症を予防するにはどうしたらいいのでしょう。
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- 遠藤
- 毎日の食事習慣、運動習慣に尽きると思います。3食きちんと食べること、欠食、間食をしないことはやはり原則です。そして肥満を防ぎましょう。エクササイズは何でもいいですから、ウォーキングなどの有酸素運動、通勤での歩行、趣味の運動、あとは健診を受け、己を知ることですね。年に1回は自分の体と向き合うことは自分自身だけでなく家族のためでもあります。
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