突然死の原因の約6割が心臓に由来していると言われています。近年の傾向として、こうした心臓病の若年化が見られるとともに、今後、心臓病の割合がガンを超えるのではないかという見方もあります。第1回目は、心臓病とは何か、その原因は何なのかをお話しいただきました。
近年増えつつある日本人の心臓病
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- 遠山
- 心臓病とはどんな病気か、分かりやすく説明してください。
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- 小野寺
- 心臓病にはいくつか種類があるのですが、動脈硬化で起こるような狭心症とか心筋梗塞(こうそく)というような病気が今、非常に問題になってきています。
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- 遠山
- 具体的にこういった病気は今後、増える可能性があるのでしょうか。
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- 向井
- これまで日本人は狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患のリスクは低いといわれてきました。ところが、生活様式の変化に伴い、肥満や糖尿病、脂質異常症などの疾患が増えてきており、現時点では虚血性心疾患が増加した証拠はありませんが、今後も肥満や糖尿病が増え続ければ虚血性心疾患が増加していく可能性が高いと考えられています。米国では食生活の改善や治療法の進歩で虚血性心疾患が明らかに減少しつつあるのに、日本は横ばいであり、実際は増加していると言えるかもしれません。
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- 遠山
- 生活様式の変化というと、例えば若年からの運動不足、食生活の乱れ、タバコとか。具体的にはそういったものもリスクになるわけですか。
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- 山田
- 心筋梗塞の直接の原因は動脈硬化なのですが、動脈硬化というのは生活習慣病が大きく関わっていて、高血圧、高脂血症、タバコ、ストレスなどが要因となります。こういった危険因子が2つ、3つ重なることによって危険率は倍、倍と増えると言われています。
20代から芽生える心筋梗塞の危険
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- 遠山
- 心臓死の統計を見ると70~80歳代ぐらいが一番多くなってますね。その芽は何歳ごろから生えるのでしょうか。
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- 小野寺
- 厚生労働省が年代別に生活習慣を調べたアンケートによると、30代から40代が一番生活に注意していないんですね。タバコも吸う率が高いし、脂肪分の多い食事も頻繁にとる。あるいは野菜果物も多くとってないとか。以前では30代で心筋梗塞というのは本当に稀だったのですが、最近ときどきそういう患者さんを見るんですよ。となると、30代の運動不足、食生活の乱れ、生活習慣の乱れが、心筋梗塞の若年齢化につながってくると予想されます。
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- 山田
- 30代ぐらいの人は、まさか心臓病になんて、という認識だと思うんです。30代で胸が痛くても、恐らくみんな病院には行かないですよね。あ、痛いなというだけで。ただ、やはり30代のころに運動不足や食生活の乱れや喫煙などが重なっていくと、生活習慣病になってしまう。本当はその時点で気を付けていくと、将来の動脈硬化というのは予防できると思います。
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- 小野寺
- 亡くなった方の心臓の血管を見ると、10代までは割とツルンとしているのですが、20代になると心臓の冠動脈がちょっと分厚くなってきます。そのあたりから動脈硬化が起こり得ると言えます。海外だと20代で心筋梗塞、動脈硬化になってしまう人も結構いるので、日本でも海外と同じような生活をしてると20代から発症するということはあり得ると思います。
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- 向井
- 生活環境で変わるという事に関して、興味深いデータがあって、広島から米国のハワイ、或いは西海岸に移住した方たちを調べたら、日本、ハワイ、西海岸と、順に脂質が高くなったそうです。同じ遺伝子を持っていても、生活環境で病気が変わってくることがあります。
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- 遠山
- 遺伝はあまり関係ないのですか。
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- 小野寺
- 遺伝は、家族に若い年代で心筋梗塞とか狭心症を起こした人がいる場合、リスクとして考えられることはあります。若いというのは40代ぐらいです。
直接の原因はコレステロール
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- 遠山
- コレステロールについてもよく言われますね。あれは非常に大きい影響を持ってるという話ですが。
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- 小野寺
- 心臓の疾患では、壁の中にコレステロールがたまって血管が狭くなるということが問題になります。その原因の1つは血液の中のコレステロール値が高いこと。もう1つは壁自体が傷つくと、そこにコレステロールがしみ込みやすくなると考えられています。コレステロール自体は悪玉、善玉というふうに分かれていますが、特に悪玉コレステロールが高いと血管の中にしみ込む量が増えます。
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- 遠山
- 壁自体に傷がつくというのは、どうして起こるのでしょうか。
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- 小野寺
- 動脈硬化の危険因子としてはっきり分かっているのが高血圧です。血圧が高い人は動脈硬化が進みやすい。血圧が高いとおそらく血管に傷がつくのだろうと僕は思ってます。問題となるのは糖尿病ですね。糖尿病があると、血液中の糖が血管に傷をつけて動脈硬化を起こす。あと、中性脂肪が高いというのもリスクになります。
生活習慣の乱れとストレスに注意
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- 山田
- 特にメタボリックとタバコですよね。生活習慣病がある人が喫煙をするということが一番リスクが高い。若くして心筋梗塞を発症する人は糖尿病とか高血圧がなくても、喫煙をしているケースが多いです。
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- 柴山
- あとはなかなか測るのは難しいのですが、ストレスですね。仕事上、対人関係なんかのストレスがかなり影響しているのではないかなと思います。
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- 遠山
- ストレスですか。これは、今まで気がつきませんでした。
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- 山田
- ストレスというのは、悪玉コレステロールを増加させる危険因子の1つなんですね。あと、塩分をたくさんとると血圧が上がるというのはもう分かっています。お酒については、日本酒換算にして1合ぐらいまでは善玉コレステロールを少しだけ上げるというデータがありますので、それくらいは飲んでもいい。ただしお酒を飲むとつまみは塩辛いので、それは控えるほうがいいだろうと。
胸痛や圧迫感は早めに病院へ
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- 遠山
- 心臓病の場合、初発症状と言いましょうか、何か兆候というものはあるのでしょうか。
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- 柴山
- まず、突然起こってくる胸の痛みや圧迫感ですね。主に左側ですが、指で示せるような狭い範囲ではなく、もう少し広い範囲の痛みです。狭心症の痛みというのは数秒から数分、長くても15分以内で治まりますが、心筋梗塞では激しい痛みが15分以上、時には数時間続くこともあります。動悸(どうき)や冷や汗、めまい、吐き気などを伴うこともあります。このような症状が、15分以上続くようでしたら救急車でCCU、いわゆる冠動脈疾患集中治療室のある病院に受診していただくことが必要だと思います。ただ、お年寄りだとあまり痛みを感じない場合もありますので、軽い症状でも繰り返される場合には、早めに病院で診察いただくことがいいかと思います。
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