静岡新聞中部版に毎年掲載されている健康座談会、「教えて健康」より人気の記事をご紹介します。
今回は2015年に掲載された糖尿病についてのお話です。
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- 遠藤 茂樹さん
- えんどう内科クリニック院長
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- 田村 憲さん
- 田村医院院長
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- 土屋 厚子さん
- 静岡県福祉部医療健康局健康増進課長
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- 遠山 和成
- 公益財団法人SBS静岡健康増進センター所長
糖尿病はなぜ怖い?
日本人の生活習慣病の一つ「糖尿病」は、偏った食事や運動不足、遺伝的問題などさまざまな発症要因によって起こる病気です。合併症も多く、発症すれば食生活の管理が一生必要になるなど特に働き盛りには厄介な病気です。最新の治療や予防について紹介します。最初のテーマは「糖尿病はなぜ怖い」です。
がんの発症とも関係する糖尿病
多くの合併症で死に至る病気
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- 遠山
- まず、糖尿病はどのような病気なのでしょうか。
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- 遠藤
- 慢性の高血糖が続く状態で、それが過度になると口渇、多飲、多尿、体重減少が起こり、神経障害が高じれば足のしびれが生じます。糖尿病網膜症が進展すれば視力も低下します。最終的には、動脈硬化を起こして、“全身病”になります。早期発見、早期治療でこのような合併症から免れることができるものの、初期のうちは症状がないため、特定健診・人間ドックなどの健康診断が大切です。
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- 遠山
- 「糖尿病」はなぜ怖いと言われるのでしょうか。
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- 遠藤
- ひどくなると「足を切断する」などとよく言われますが、それは、さまざまな血管障害、心筋梗塞などの合併症を引き起こす病気だからです。治りにくく、治療を尽くしても、健康人よりも10年ほど寿命が短いと言われています。最近では、がんとも深く関係していることが分かってきていて、糖尿病患者の最大の死亡原因は、がんです。2013年に行われた日本糖尿病学会と日本癌学会の合同委員会報告では、たとえば、糖尿病患者が大腸がんになる確率は糖尿病でない人の1・36倍、肝臓がんが2・24倍、すい臓がんは1・85倍となっています。さらに、女性特有の病気では子宮体がんが1・68倍、卵巣がんが2・42倍と高くなっています。
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- 土屋
- 予想以上にがんになる確率が高いのですね。
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- 遠藤
- 糖尿病とがんの共通因子には、加齢や性別、肥満、運動不足、不適切な食事、食物繊維の不足、過剰飲酒、喫煙などがあります。言い換えれば、糖尿病の患者さんが食事療法や運動療法にきちんと取り組み、さらに、節酒や禁煙を心掛ければ、がんのリスクも減少します。
歯周病や認知症のリスクも
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- 遠山
- 合併症はがんだけではないですね。
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- 遠藤
- 最近では歯周病とも関係していて、糖尿病になると歯周病も重症化します。また、食後の血糖値上昇が原因で、アルツハイマー病などの認知症のリスクも糖尿病でない人の2~4倍というデータもあります。
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- 遠山
- 食事の後、歩くように言われるのは血糖値を下げるためですか。
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- 遠藤
- そうですね。食後の血糖値上昇は動脈硬化にもよくないと言われているため、食後の運動は重要です。ただ、内服薬やインスリンを使っている場合、低血糖になることがありますが、高齢者で低血糖が頻発する場合はこれも認知症のリスクになると言われています。高齢化社会の今、認知症は社会問題の一つになっていますので、糖尿病の大きな合併症としても、心筋梗塞や失明、腎不全に加えて、今後より注目されてくるのではないかと思います。
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- 土屋
- 県でも、「糖尿病をきっちり治療していれば、認知症のリスクも減り、がんも予防できる」というようなメッセージを送って、県民の健康寿命の延伸とQOL(生活の質)の向上に努めたいと思います。
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- 遠山
- 糖尿病は、すい臓のβ細胞が破壊して起こる1型と遺伝的体質や肥満によって環境要因が加わって起こる2型に分かれますが、日本人と外国人の違いなどはあるのでしょうか。
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- 田村
- 1型糖尿病は、幸い日本人は欧米人よりも発症しにくいといわれていますが、2型糖尿病、いわゆる遺伝と生活習慣病が原因の糖尿病の場合は、日本人やアジア人のほうが欧米人よりも発症しやすいと言われています。肥満度を示すBMIでは、欧米の人は25を超えると糖尿病になりやすいと言われていますが、欧米で暮らす日本人は23を超えると発症の危険が高くなるというデータもあります。生活スタイルや人種によっても異なりますが、日本人の糖尿病は遺伝的なものと生活習慣によるものの両方に強く影響を受けています。
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- 土屋
- 県の調査で、平成24年度に特定健診を受けた人のデータがあり、肥満の人が糖尿病や高血圧と脂質異常のリスクをどのぐらい持っているかが分かるのですが、肥満群はやはり糖尿病になるリスクが非常に高いという結果になっています。食生活を中心とした生活習慣の改善が今、われわれに不可欠な状況だと思います。
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- 田村
- 肥満が起こる状況はカロリーが慢性に過剰に摂取された状態です。血糖値は体内では非常に厳密なコントロールを受け、脳の活動を支えるなどしておりますが、カロリーの過剰な摂取が続いていると、血糖をコントロールしているインスリンやグルカゴンなどのホルモンのバランスが崩れ始めます。このようなバランスの崩れが糖尿病などの生活習慣病を発症させる要因になっているのだと思います。
より明確になった診断基準
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- 遠山
- 糖尿病は万病の元ですね。診断基準は昔と随分変わってきたようですね。
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- 田村
- 新しい診断基準では血糖コントロールの指標であるヘモグロビンA1cの値が取り入れられ、また診断数値が国際的な基準に合わせられました。空腹時血糖126mg/dl、糖負荷後2時間で200mg/dl以上、あるいは随時血糖が200mg/dl以上、ヘモグロビンA1c6・5%以上のいずれかが確認された場合「糖尿病型」と判定します。以前に比べ、診断しやすい基準となっているほか、国際的なデータと比較しやすくなっています。
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- 遠山
- 糖尿病の県内の予備群はどのくらいですか。
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- 土屋
- 平成24年度の特定健診の中では、男性28万人のうち4万1000人が予備群で、3万3000人が有病者です。女性は25万人受けていまして、3万4000人が予備群で、1万5000人が有病者です。県内でも、西部と東部地域に多いというデータがあります。
子どもの肥満と糖尿病の関係
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- 遠山
- 食生活の乱れから子どもの肥満も増えていると感じます。肥満は都会と田舎という地域性も関係しているのではないかと思うのですが。
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- 遠藤
- 親の生活習慣、食習慣が子どもの肥満に影響してきます。それから、両親のどちらかが糖尿病の遺伝子を持っていると発症するリスクはかなり高くなり、30代、40代で発病する場合もあります。
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- 遠山
- 子どもの肥満は学校でもっと検査していくべきだと思いますがいかがでしょうか。
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- 土屋
- 静岡県では多くの中学1年生で生活習慣病予防検診を行っていますが、最近の特徴として、標準体重の子が減り、肥満または痩せている子が増えていると聞いたことがあります。これは食生活の乱れが原因です。年長児の子が1人で朝食を食べる割合が15・5%あり、孤食の子どもは肥満や過体重になりやすいというデータもあります。県内でも「0歳から始まるふじのくにの食育」というスローガンを掲げて食育を啓発していますが、朝食を家族そろってきちんと食べるなど食生活の改善を、味覚が完成する前の乳幼児のうちからもっとやらないといけないと考えています。また、野菜を中心とした和食を給食などに取り入れることも検討されています。
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- 遠山
- 糖尿病の発症に性差はありますか。
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- 田村
- 糖尿病は男性で発症頻度が高く、男性に多い喫煙者では非喫煙者よりも発症するリスクが1・6倍と高くなっています。
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- 遠山
- 糖尿病が短期間で悪くなることはありますか。
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- 遠藤
- やはりストレスが過食の原因となり、糖質の過剰摂取が、糖尿病の悪化につながります。また特に冬場は、風邪やインフルエンザなどの感染症で糖尿病が悪化してくることがあります。勤務者では残業、夜勤、転勤など仕事環境の変化や、若年層の場合はスナック菓子や清涼飲料水の過剰摂取など食生活の乱れも症状悪化の原因となります。高齢者の場合は足腰やひざの痛みなどが原因で運動量が減り、急に悪くなる場合もあります。
糖尿病予防は日頃から
糖尿病は、栄養の偏った食事、運動不足、遺伝的問題など、発症要因はいろいろあり、深刻な合併症も知られています、一方で食生活とウォーキングなどの運動の改善で、予防することも可能です。どんなことに気を付けたらいいのでしょうか。
適切な運動と食事が症状改善の鍵
原因は現代人の食生活と運動不足
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- 遠山
- 最近の糖尿病の患者さんについて何か気になる点はありますか。
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- 遠藤
- サラリーマンなどの成人では、朝食を食べないとか夕飯の摂取時間が遅い、カロリー過剰などが目立ちます。また、女性の場合は間食の多さや飲酒も増えてきています。男女とも肥満例が多く見られます。
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- 田村
- 特に男性に多いのですが、夜中に働くなどの不規則でストレスの多い生活をしている方は、糖尿病のコントロールが難しいように思います。定年などにより、生活のリズムが変わり、運動する時間を取れるようになって血糖コントロールが著しく改善した人もいます。たとえばヘモグロビン(Hb)A1c10%以上、常に血糖値が200mg/dlを超えるような状態からヘモグロビン(Hb)A1c6%台に改善した例もあります。ストレスがかかった生活が続くことが、糖尿病を悪化させる要因になっているように感じます。また、20年ほど前から小児肥満の増加が話題となっていて、今後20?40歳ぐらいの年代の方の糖尿病が増加してくることを心配しています。
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- 遠山
- 最近、「炭水化物ダイエット」が盛んに言われますね。
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- 遠藤
- 糖尿病治療中の人が行う炭水化物ダイエットは“くせ者”の印象があります。まず、低血糖になる危険があります。また体重が一時的に落ちたり、検査データも改善したりして、一見、いいのですが、長期的にみると、決して寿命が延びたりすることはなく、動脈硬化性疾患はむしろ増えたり、たん白質の摂取が増えて腎臓の負担が増えることもあります。日本糖尿病学会も、極端なダイエットより、三食のバランスのよい食事を勧めています。治療中の人は、主治医とよく相談してほしいです。
異なる日本人と欧米人のリスク
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- 遠山
- 日本人の糖尿病の最たるリスクはやはり肥満なのでしょうか。
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- 遠藤
- 中には、肥満でない人が発症する場合もありますが、肥満は大きく関係しています。親が糖尿病だと子どもも糖尿病になりやすく、日本人の糖尿病は、遺伝因子に加えて、それ以上に悪い生活習慣が糖尿病の原因だといえます。現代人の環境要因として、炭水化物や糖質脂肪の多い食事と、国民的運動不足が糖尿病増加の大きな原因の一つだと思います。また、最近では大都市よりも地方の農村部のほうが、移動手段が車中心で、糖尿病が増えているとも言われています。静岡市内にある私のクリニックでも初診で来られる患者さんのほとんどが運動習慣のない人です。
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- 遠山
- 日本人の肥満についても欧米人とも違うのでしょうか。
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- 田村
- 日本人は欧米に比べると、内臓脂肪型が多くて、インスリンに対しても感受性が高い民族と言われています。人はエネルギーをある程度、蓄えておく必要がありますが、皮下脂肪として蓄え切れなくなった部分が内臓にたまってきたり、あるいは脂肪肝になったり、筋肉にたまったりします。内臓脂肪はいろいろな物質を出して高血圧の原因になったり、糖尿病を発症させてきたりします。脂肪の体内での分布の仕方が人種によって異なり、糖尿病の発症に差が出るのだと思います。
発症リスクの高い肥満
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- 遠山
- 肥満予防には特定健診などの健康診断がとても重要だと思いますが、静岡県の状況はどうでしょうか。
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- 土屋
- 静岡県の平成25年度の特定健診の受診率は45・2%です。国の目標値は70%以上と言われていますので、まだかなり低いのが現状です。家族や近所で誘い合って受けてもらうことが必要だと思います。県内の市町でも無料で健診できる地域や、がん検診と合わせてできる地域は受診率が上がっていますので、各自治体の取り組みも重要だと考えています。
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- 遠山
- 確かに受診率が増えれば病気は減ります。皆連れだって特定健診を受けましょう。さて、糖尿病の予備群とはどのような人なのでしょうか。
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- 田村
- 糖尿病の基準を満たさないけれど、正常値ではない状態を予備群と言っています。実は予備群は少し、減っているというデータも出ています。これは、診断基準の変更も影響していると思いますが、数年前から特定健診が始まり、その効果が出始めているのかもしれません。ただ、予備群が何も対策を講じないと毎年1割程度の方が糖尿病になっていますので、やはり予備群の人においても食事や運動療法が重要です。
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- 土屋
- 糖尿病予防については、健康や医療に詳しい保健師や管理栄養士などを中心に地域ぐるみで積極的に健康づくりに取り組むことも大切だと思っています。食事に関しては、平成25年給食施設実態調査では、ヘルシーメニュー(食塩や脂肪が少ない、野菜が多いなど)を提供している特定給食施設が、全体の70・6%でした。県では、100%を目指していきたいと考えています。また、静岡市内で「お弁当の日」を設けている会社があって、男性社員も自分で作って出勤する人がいるそうです。男女かかわらず、自分で料理を作る習慣付けることはとてもいいことだと思います。
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- 遠山
- 糖尿病の人と予備群は見分けることができますか。
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- 遠藤
- 見た目では判断できませんし、予備群は症状もないので、いきなり検査をしたら、かなり悪化していたというケースもあります。ですが、やはりメタボであるかどうかが大きなポイントではあると思います。内臓脂肪型の肥満があるかどうかや、特定健診の項目にある腹囲やBMI、血糖、HbA1cなどの測定で容易に発見できます。
発症予防は食事・運動療法を中心に
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- 遠山
- 発症を予防するにはどうしたらいいのでしょう。
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- 遠藤
- 毎日の食事習慣、運動習慣に尽きると思います。3食きちんと食べること、欠食、間食をしないことはやはり原則です。そして肥満を防ぎましょう。エクササイズは何でもいいですから、ウォーキングなどの有酸素運動、通勤での歩行、趣味の運動、あとは健診を受け、己を知ることですね。年に1回は自分の体と向き合うことは自分自身だけでなく家族のためでもあります。
糖尿病の治療
日本人の現代病といえば、「生活習慣病」の一つ、糖尿病。栄養の偏った食事、運動不足、遺伝的問題など、発症要因はいろいろあり、重い合併症も知られていますが、薬の開発や生活改善で、発症を遅らせたり、治すこともできるようになりました。
健康診断や早期治療で、重症化を防ぐ
1に食事、2に運動、3に薬
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- 遠山
- 糖尿病と診断されてしまったら、どのような治療をしていけばよいのでしょうか。
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- 遠藤
- 治療の根本は当然ながら食事療法、運動療法です。それから薬剤による治療です。その中で、とても重要なのは今の生活習慣の問題点を看護師や管理栄養士など専門家と一緒に考えて対策に取り組むことです。重症の場合は、薬剤による治療も行いますが、やはり根本は食事や運動等の生活習慣の改善だと思います。医師としても、患者さんから、生活状況をよく聴取してから治療することを心掛けています。特に肥満を要因とする2型糖尿病は、生活習慣の改善だけで効果がある場合も多いです。糖尿病は、完全に治癒することは難しい病気ですが、継続的な食事・運動療法で限りなく良好にコントロールし、健康長寿を達成することは十分可能です。
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- 田村
- 繰り返しになりますが、糖尿病は遺伝プラス生活習慣によって発症してくるものです。初期の段階であれば、きちんと食事・運動療法をすることによって、糖尿病の発症をかなり遅らせることができます。発症の時期が遅れると、さまざまな合併症についての危惧も減ってきますので、発症しないようにする、あるいは悪化しないようにするという部分では、生活習慣の改善で大きく成果を得られると思います。
食事制限は専門家に相談を
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- 遠山
- 具体的にはどんな食事・運動療法を行いますか。
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- 遠藤
- まず、適切な食事・運動療法を実践しないと、いくら薬剤で治療しても良くなりませんので、管理栄養士との面談などを通して、食品交換表に基づく1日の必要カロリーを算出し、食生活を改善していきます。飲料をノンカロリーにしたり、なかなか自分で調整できない男性や高齢者などには、カロリーに配慮した宅配食の活用を勧めたりしています。食事のとり方としては野菜から先に食べることなども推奨しています。運動については、毎食後、寝る時以外は万歩計を付けて生活すること、外に出られない人はストレッチや竹踏みでもいいですし、家事を一生懸命やることも運動の一つです。また、可能な場合はランニングマシンなど室内でできる運動器具を活用することも勧めています。必ずしも食後にこだわらなくても、運動習慣を身に付けることがまずは大事だと思います。肥満のある人では、体重の5%落とせば、相当症状が良くなります。ただ、やせ型で糖尿病の人はインスリンの分泌不良が関係していると考えられますから、適切な薬剤による治療を考えていただきたいと思います。
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- 田村
- これまで糖尿病の治療は、血糖降下薬を中心に、糖の吸収を抑える薬、インスリン作用を改善する薬などが使われていました。多くの合併症が血糖を正常化することにより克服できると考えられていましたが、最近では下げ過ぎたことによる低血糖の危険が重視されるようになってきました。数年前からはインクレチンという物を食べたときに消化管から分泌され、すい臓に作用してインスリンの分泌をコントロールしているホルモン作用を調節する薬剤が使用されることが多くなってきています。この種類の薬剤は食欲を抑制し、食後の高血糖を改善でき、また低血糖を起こしにくいのが特徴です。また血糖をコントロールするだけではなく、境界型糖尿病の時期から生じる動脈硬化の予防といった点から、コレステロールを下げる薬剤の使用が勧められるようになってきています。
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- 遠山
- 糖尿病は治療が長期にわたる病気ですが、どの治療も無理せず続けることができるといいですね。
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- 土屋
- やはり、家族のサポートというのが一番大切で、家族の皆さんにはサポートできるような体制づくりを日頃から心掛けてほしいですね。たとえば、治療はさまざまな我慢を強いられるものです。頑張って治療に取り組む家族が上手に褒めて、明るくポジティブに治療に向かう気持ちを出してあげることがとても大切ではないかと思います。
かかりつけ医の役割再認識
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- 遠山
- 地域のかかりつけ医とのコミュニケーションも大切ですね。かかりつけ医が果たす役割は何だと思いますか。
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- 遠藤
- 私は総合病院で長年勤務した後、開業して10年経ちましたが、開業医に必要なことは患者さんと同じ目線でお付き合いすることだと思います。「最近、こんなことがあってうれしかった」、逆に「困った」などの些細な相談や時には愚痴なども、結果として治療に役立つことも多いものです。大きな施設とは違い、顔なじみの看護師や受付のスタッフがいるのも大きなメリットだと思います。“お友達”になり過ぎると、治療に逆効果の場合もありますが、スタッフが一緒になって患者さんの日常の出来事に共感しながら、「受診しやすい」診療所になるように環境を整えて治療をサポートしていきたいですね。
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- 田村
- 特に糖尿病のような病気は、気軽に受診できる「かかりつけ医」の役割は大きいと感じています。診療所なら、症状によって診療の間隔を短くしたり、長くしたりと、きめ細かい対応ができると思います。糖尿病は、患者数の多い病気ですから、どの科の医師でも広く知識を持つことが大切で、かかりつけ医と総合病院との情報共有、連携もとても大切になってくると思います。
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- 遠山
- 今後、ますます増えるといわれている糖尿病について、静岡県はどのような対策を考えていますか。
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- 土屋
- 実は、特定健診で糖尿病と診断された県内受診者のうち、4割を超える人が病院を受診していない現状があります。お医者さんにかからずに投薬などの適切な治療を受けなければ、病気が進行し、本人が辛い思いをすることはもちろん、やがて医療費の増大にもつながります。そのため、県としては、来年度は「重症化の予防対策事業」を考えています。「糖尿病」と診断されて治療を受けてない人や自己中断してしまった人をどのようにフォローし、治療につなげるかについて、体制整備などいま一歩踏み込んだ対策を進める予定です。また、今後も、60万人にも及ぶ特定健診のデータを分析して「見える化」を行い、健康課題を明らかにして地域の実情に応じた健康づくりに取り組んでいきたいと思っています。